不動産屋の気になるNEWS!20億円でも「相続しない」はあり得る? 相続税制度と不動産承継の見えにくい難しさ | センチュリー21グローバルホーム


  • 不動産屋の気になるNEWS!20億円でも「相続しない」はあり得る? 相続税制度と不動産承継の見えにくい難しさ




     


    不動産屋の気になるニュース 2026年6月号(No.61)

    20億円でも「相続しない」はあり得る?
    相続税制度と不動産承継の見えにくい難しさ

    「20億円の遺産を相続放棄」と聞くと、私はもちろん、
    多くの人はまず「なぜ? もったいないのでは」と感じるのではないでしょうか。

    2026年4月に、故・中山美穂さんをめぐる一部報道が国会質疑でも取り上げられ、
    「ご子息が約20億円の遺産相続を放棄した」
    という話題が広く注目されました。
    「20億円も遺産があるのに相続しないなんて、なぜ?」
    そんな驚きを持った方も多いのではないでしょうか。

    今回の気になるニュースは遺産額や放棄に至った具体的事情、
    個別事情を断定・追及するものではなく
    「なぜ巨額の遺産でも放棄が合理的になり得るのか」を制度面から整理するものです。

    ただ、この話題が大きな関心を集めた理由はよくわかります。
    多くの人にとって、相続とは「財産を受け取ること」であって、
    「受け取らないほうが合理的な場合がある」という発想は、あまり直感的ではないからです。

    しかし実際の相続実務では、多額の財産があることと、安心して承継できることは同じではありません。
    特に不動産が絡む相続では、「評価は高いのに現金がない」「分けにくい」「売りにくい」「納税期限だけ先に来る」といった問題が重なり、
    相続放棄や承継見直しが現実的な選択肢になることがあるのです。

     

    なぜ「もらえるのに放棄する」のか

    相続放棄は、財産だけを選んで捨てる制度ではない

    まず前提として、相続放棄は「いらないものだけ放棄する」制度ではありません。
    預貯金は受け取り、不動産や借入だけ放棄する、という選び方はできません。
    相続放棄をする場合は、プラスの財産もマイナスの財産も含めて、
    相続人としての地位そのものから離れることになります。

    つまり、相続放棄が検討される場面は、単純に「借金が多いとき」に限りません。
    一見すると資産超過に見えても、実際には次のような事情があると、承継が重荷になることがあります。


    •納税資金が足りない 
    相続税は、原則として現金で納める税目です。遺産総額が大きくても、
    その多くが不動産や非上場株式など換金しにくい資産で占められていると、
    納税資金の手当てが難しくなります。

    •財産の中身が複雑
    共有持分、不整形地、借地権付き建物、収益性の低い賃貸物件、
    管理負担の重い地方の不動産などは、
    「資産がある」ことと「引き継ぎやすい」ことが一致しません。

    •家族関係や生活基盤の事情 
    相続人が海外在住であったり、日本国内の不動産管理に関与しづらかったり、
    他の相続人との調整負担が大きかったりすると、
    経済合理性だけで承継を決められない場合があります。
    相続は、金額の問題であると同時に、管理・納税・処分・感情調整の問題でもあるわけです。

     

    相続税制度が難しくするポイント

    「遺産が多い=手元に残る」が成り立たない理由

    相続税は、単純に「遺産総額に税率を掛ければ終わり」という制度ではありません。
    基礎控除、法定相続分、取得金額、各種特例の適用可否によって結果が大きく変わります。
    したがって、ニュースなどで見かける「遺産○億円だから税金も○億円」といった見方は、そのままでは使えません。

    とはいえ、巨額相続で税負担が非常に重くなる可能性自体は十分にあります。
    相続税の最高税率は55%であり、遺産規模が大きいほど税負担のインパクトは無視できません。
    さらに実務上の難しさは、税額そのものよりも、「納税のタイミング」と「資金化のしにくさ」にあります。

     

    •申告と納税の期限は早い 
    相続税の申告・納税期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
    一方で、不動産の売却や整理、遺産分割協議、名義関係の確認には時間がかかることが少なくありません。

    •評価額と換金額が一致しない 
    不動産は評価上それなりの金額が付いても、実際にその価格ですぐ売れるとは限りません。
    立地、接道、建物の状態、賃貸借関係、共有関係の有無などによって、
    売却可能性も価格も大きく変わります。

    •特例が使えるかどうかで差が大きい 
    代表例が小規模宅地等の特例です。この特例は非常に有効ですが、
    誰が取得するか、居住や事業継続の要件を満たすかなど、
    適用条件の確認が不可欠です。「相続税が高い」と感じていても、
    実は特例適用で大きく圧縮できるケースもあれば、
    逆に見込み違いで使えないケースもあります。

    制度を知っているかどうかではなく、誰がどの財産をどう承継するかまで設計できているかどうかで、結果が変わるのです。

     

    不動産が入ると、なぜ一気に難しくなるのか

    分けにくい、売りにくい、残しにくい

    相続で不動産が難しいのは、金額が大きいからだけではありません。
    「きれいに分けられない」という性質そのものが、相続の難度を上げます。
    たとえば、現金なら1,000万円を500万円ずつ分けることは簡単です。
    しかし土地や建物は、そうはいきません。

    無理に共有にすると、将来の売却や建替え、賃貸活用の場面で意思決定がまとまらず、
    次の世代に問題を先送りすることがあります。

     

    •評価と実需がズレやすい 
    相続税評価では価値があるように見えても、
    実需が弱いエリアの不動産は買い手がつきにくい場合があります。
    その結果、「税金はかかるのに換金できない」という厳しい状況が起こります。

    •収益不動産にも別の難しさがある 
    賃貸中の物件であれば家賃収入がありますが、
    修繕費、空室リスク、借主対応、管理委託、将来の建物更新など、
    引き継ぐ側には継続的な経営判断が求められます。単に「家賃が入るから得」とは言い切れません。

    •自宅不動産は感情が絡みやすい 
    実家や先祖代々の土地は、経済合理性だけでは判断できません。残したい人、売りたい人、住みたい人、
    現金化したい人がそれぞれいて、分割協議が長引く原因になります。
    不動産相続の難しさは、税務だけでなく、法務、実務、感情の三つが同時に動く点にあります。

     

    本当に必要なのは「節税」より「承継設計」

    いくら残すかではなく、どう引き継げるか

    相続対策というと、どうしても「節税」に意識が向きがちです。
    もちろん税負担の軽減は重要ですが、それだけでは不十分です。
    実務で本当に大切なのは、次の三つを同時に考えることです。

     

    •納税資金をどう確保するか 
    現預金、生命保険、換金しやすい資産の配置など、
    納税のための資金動線を事前に作っておくことが重要です。

    •誰に何を引き継ぐか 
    不動産は、相続人の居住状況、管理能力、他資産とのバランスを見ながら配分しないと、
    相続後に不満や機能不全が起こりやすくなります。

    •持つ不動産と手放す不動産を分けておくか 
    すべてを次世代に残すことが正解とは限りません。
    収益性、流動性、維持コスト、立地の将来性を見ながら、
    生前のうちに整理しておくほうがよいケースもあります。
    相続は、亡くなった後に知恵を絞るものではなく、
    亡くなる前に「分け方」「払い方」「残し方」を整えておくほど、
    穏やかに着地しやすくなります。

     

    多額の遺産でも、相続しないほうが合理的な場合はある

    「多額の遺産があるのに、なぜ放棄するのか」という疑問は、とても自然です。
    ただ、相続の現場では、遺産の総額だけでは判断できません。

    不動産の比率が高い。納税資金が足りない。特例の使い方で結果が変わる。
    管理や売却の負担が重い。家族の事情が複雑である。
    こうした要素が重なると、「相続すること」がそのまま利益になるとは限らないのです。

    だからこそ、相続は金額の大小ではなく、「承継できる形になっているか」という視点で考える必要があります。
    相続税の制度や不動産承継は、知っているつもりでも、個別事情で結論が大きく変わります。
    少しでも気になることがあれば、早めに整理しておくことが大切です。
    相続に関するご相談も、私にお気軽にご相談ください。

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